秘密録音の違法性とは?通話録音を秘密で行うことの是非

はじめに

通話録音は現在企業のコンプライアンスや社内教育のために幅広く利用されています。 しかし、何も告げずに通話録音するのではなく、通話録音の前には必ず告知が行われます。

では、告知を行う根拠は?

当記事では、根拠について詳しく解説します。

目次
通話録音は違法なのか?
通話録音と憲法13条プライバシーの侵害
東京高裁昭和52年7月15日判決「秘密録音に関しての判例」
千葉地裁平成3年3月29日判決「秘密録音に関する判例」
法人・企業が行なう通話録音に関する国民生活センター消費者苦情処理専門委員会小委員会の見解
盗聴と秘密録音は違うのか
秘密録音と盗聴は犯罪になるのか
まとめ

通話録音は違法なのか?

通話録音をすることは法律で禁じられているのでしょうか?
通話を録音されることは後から聞き返されるということであり、思いもしない発言が流出してしまったりといった危険性があります。
そういった意味ではプライバシーの侵害にあたるとも考えられます。
しかし、現実的には通話録音など録音は一般的に行われており、文字起こしをするサービスなどもしっかりと存在しています。
また、通話録音は以下の点で導入メリットが有るとされており、導入が加速しています。

  1. 社内コンプライアンス違反の防止
  2. 聞き漏らしや聞き間違いを無くす
  3. 証拠として使える
  4. ステークホルダー対策
  5. オペレーターの負荷軽減
  6. スタッフ教育~対応力の向上と満足度の向上
  7. 分析等に利用可能
  8. 記録として残しておくことができる
  9. 管理がしやすい
  10. 情報共有がしやすい

導入メリットとデメリットについての詳細はこちら
法人・ビジネス向け「通話録音サービス」とは?種類や機能など徹底解説

では、通話録音してもいい根拠となる法律とは一体何なのでしょうか。

まず最高法規たる憲法では、撮影や録音を禁止するという規定はありません。
次に個別の立法で撮影や録音を禁止するという規定があるかというと、これもまた存在していません。
つまり、日本では録音は禁止されておらず、自由に行なうことができるというのが原則です。
禁止法が無いということが、通話録音を行える根拠です。

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通話録音と憲法13条プライバシーの侵害

しかし、憲法には別に以下の規定があります。

第十三条
すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=321CONSTITUTION#39

この規定を根拠として、プライバシーの権利というものが確立されており、プライバシーには通話録音されない権利も含まれるのではないかという点が争点となります。

【コラム】プライバシーの権利とは

人には他人に知られたくない情報や、秘密にしておきたい情報があります。そして、憲法13条ではそうした情報を他人に知られないようにし、あるいはコントロールすることを認めているとされています。
学説によっては、コントロールするところまでは認めていないとする説もありますが、個人情報保護法の成立はこのコントロールする権利を具現化したものと考えられています。
このプライバシーの権利は、憲法21条の表現の自由とぶつかることがよくあり、最終的には公共の福祉の観点などで判断されることがあります。
有名な判例に以下があります。

「宴のあと」事件(東京地判昭和39・9・28)
この判例はプライバシー権を人権として認め、プライバシー権侵害として認められるための要件を以下のように定めました。

  1. 私生活の事実、または事実らしく受け取られるおそれがある
  2. 一般人の感受性を基準にして、当人の立場に立ったときに、公開を欲しないと認められることである
  3. 一般の人に、未だ知られていないことである

プライバシーには通話録音されない権利も含まれるのではないかという点と秘密録音の違法性に関して、以下の判例で取り上げられていますので、確認していきましょう。

東京高裁昭和52年7月15日判決「秘密録音に関しての判例」

相手方の同意なしに対話を録音することは、公益を保護するため或いは著しく優越する正当利益を擁護するためなど特段の事情のない限り、相手方の人格権を侵害する不法な行為と言うべきであり、民事事件の一方の当事者の証拠固めというような私的利益のみでは未だ一般的にこれを正当化することはできない。

従って、対話の相手方の同意のない無断録音テープは不法手段で収集された証拠と言うべきで、法廷においてこれを証拠として許容することは訴訟法上の信義則、公正の原則に反するものと解すべきである。

一方、このような無断録音による人格権の侵害は不法行為に基づく損害賠償などで解決すれば足り、無断録音テープの証拠能力には影響を及ぼさないとの立場も考えられないわけではないが、反面右損害賠償の義務を甘受することと引換えに、不法な手段で獲得した録音テープを法廷に提出することを訴訟当事者の自由に任せ、これを全て証拠として許容することは無断録音による右人格権侵害の不法行為を徒らに誘発する弊害をもたらすと共に、法廷における公正の原則にも背馳するものと言わなければならない。

右の理由から、前認定の如く被告Bの同意を得ずして原告により秘かに録音されたものであることの明らかな甲第四号証の録音録取書は証拠として採用し難い。

★結論:同意を得ないで行なう録音は相手方の人格権を侵害する不法行為に当たり、不方行為により収集された証拠には訴訟法上の信義則、公正の原則に反するから証拠能力を認められない。

また、次のような判例もあります。

千葉地裁平成3年3月29日判決「秘密録音に関する判例」

「一般に,対話者の一方当事者が相手方の知らないうちに会話を録音しても,対話者との関係では会話の内容を相手方の支配に委ねて秘密性ないしプライバシーを放棄しており,また,他人と会話する以上相手方に対する信頼の誤算による危険は話者が負担すべきであるから,右のような秘密録音は違法ではなく,相手方に対する信義とモラルの問題に過ぎないという見方もできよう。
しかし,それは,相手方が単に会話の内容を記憶にとどめ,その記憶に基づいて他に漏らす場合に妥当することであって,相手方が,機械により正確に録音し,再生し,さらには話者(声質)の同一性の証拠として利用する可能性があることを知っておれば当然拒否することが予想されるところ,その拒否の機会を与えずに秘密録音することが相手方のプライバシーないし人格権を多かれ少なかれ侵害することは否定できず,いわんやこのような録音を刑事裁判の資料とすることは,司法の廉潔性の観点からも慎重でなければならない。したがって,捜査機関が対話の相手方の知らないうちにその会話を録音することは,原則として違法であり,ただ録音の経緯,内容,目的,必要性,侵害される個人の法益と保護されるべき公共の利益との権衡などを考慮し,具体的状況のもとで相当と認められる限度においてのみ,許容されるべきものと解すべきである。」
 本件について検討すると,①本件脅迫事件について,その犯人が中核派構成員である容疑が濃厚であり,本件捜索差押えの際に,同派構成員が在所していたことから,同事件に関連する証拠として被告人を含む中核派構成員の音声を録音する必要があったこと,②被告人は,相手方は警察官であること及び捜索差押えの被疑事実の概要を了知した上で警察官との会話に応じていること,③その会話は捜索差押えの立会いに関連することのみでプライバシーないし人格権に関わるような内密性のある内容ではないこと,④録音担当の警察官等は捜索差押え担当の警察官と被告人との会話をその側で密かに録音していただけで,被告人に発言させるために,何ら強制,偽計等の手段を用いていないことが認められ,「以上の諸事情を総合すれば,被告人を含む中核派構成員らが本件犯行を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある上,本件録音の全過程に不当な点は認められず,また,被告人の法益を侵害する程度が低いのに比し,電話による脅迫という事件の特質から秘密録音(わが国では,いまだこれに関する明文の規定がない。)によらなければ有力証拠の収集が困難であるという公益上の必要性が高度であることなどにかんがみると,例外的に本件秘密録音を相当と認めて許容すべきであると解される。」

★結論:東京高裁昭和52年7月15日判決の結論を原則としては次のように維持。
「捜査機関が対話の相手方の知らないうちにその会話を録音することは,原則として違法」
しかし、一方で公共の福祉のためには一定程度認められる場合がある事を含ませての判例となっている。
「録音の経緯,内容,目的,必要性,侵害される個人の法益と保護されるべき公共の利益との権衡などを考慮し,具体的状況のもとで相当と認められる限度においてのみ,許容されるべき。」

以上のことから、法的には禁止する法令は定められていないが実際には判例で秘密録音は禁止されています。
録音を行う場合には、しっかりと告知をしてから録音するのはこれらの判例から明確であると言えます。

法人・企業が行なう通話録音に関する国民生活センター消費者苦情処理専門委員会小委員会の見解

また、法人・企業が行なう通話録音に関しては、国民生活センター消費者苦情処理専門委員会小委員会は事業者が顧客からのクレームについて秘密録音する行為は個人情報保護法の適用という観点からは必ずしも個人情報の不正な取得(個人情報保護法17条)や利用目的の通知義務等(個人情報保護法18条)に直ちに違反するとは言えないが、事業者が顧客の信頼を確保する対応のあり方としては、書面による直接取得における利用目的の事前明示(個人情報保護法18条2項)に準じた取り扱いが望ましいとしています。
http://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20080508_4.html

法人・企業においては、通話録音は先に述べたメリットが大きいため導入が加速していますが、これらを踏まえて、原則として秘密録音は違法だから行わないということと、通話録音を行なう際はなるべく書面で事前に利用目的を明示する事、告知を必ず行ない同意を得る事が必要です。

盗聴と秘密録音は違うのか

実は盗聴と秘密録音は別の概念だということを知っていましたでしょうか。
盗聴は、第三者が当事者間の会話を盗み聞き、録音することを言います。
以下の構図です。

では秘密録音とはどのようなものでしょうか。
秘密録音は、当事者間で無断録音が行われることを指します。
構図としては以下のとおりです。

秘密録音と盗聴は犯罪になるのか

結論、いずれも犯罪になるとする法律はなく、秘密録音も盗聴もいずれも犯罪にはあたりません。ただし、前述したような判例の通り、犯罪にはなりませんが証拠能力を認められない可能性が高いということです。
また、信義誠実の原則に反するような方法で行った秘密録音に関しては、犯罪ではありませんがプライバシーの侵害として民事訴訟の対象になる可能性もあります。

まとめ:法人・企業が通話録音をするときにはしっかりと告知をしましょう。

当記事でお伝えしてきたことを最後にまとめます。

  1. 企業・法人が通話録音をする際には、しっかりとまず告知をする必要があることを学びました。
  2. 秘密録音は犯罪ではありませんが、公共の福祉との兼ね合いで違法性を認定され、証拠能力を否定されることがある。
  3. 通話録音をする場合には、国民生活センターの見解によると書面による直接取得における利用目的の事前明示(個人情報保護法18条2項)に準じた取り扱いが望ましいとされている。

以上をしっかりと抑えた上で、法人・企業は通話録音を行なうようにしましょう。